エリック・モルガ
サヴニエール、その素晴らしい地理的条件をありながら、古く伝統的なワイン造り固執している造り手たちに対し、本来のサヴニエールとは何かを示している生産者がエリック・モルガだ。
ロワールワイン生産者組合の元会長を父に持ち、アンジュの有名ドメーヌ、シャトー・デュ・ブルグイユを所有する家系に生まれたエリックが、両親の伝統に固まったワイン造りに納得ができず独立し、1995年25歳の若さでサヴニエールにドメーヌを設立。サヴニエールのすべての生産者を訪問し、サヴニエールにとって最も良いシュナン・ブランの栽培・醸造は何かと模索。しかし、その答えは容易には見つからず、5年間、悩み続けた後にブルゴーニュで様々な生産者と出会うことで呪縛から解放され、自らのスタイルを見出すに至る。そしてドメーヌ ビゾのジャン-イヴ・ビゾとの出会いはエリック・モルガのワイン造りの方向性を確信へと導いた。
畑とブドウ栽培
2005年からは良いワインではなく、あくまでグラン・ヴァンを造ることにこだわり、所有畑の区画整理を実施。砂利の混じる区画はすべて売却し、片岩の多い土地のみを残す。さらに、昔の文献で最も良いワインができる区画として評価されていたロワール川沿いの区画を購入し、その場所の6haの畑に集約していった。この区画整理がワインの内容として味わいになって表れたのが2012年ヴィンテージ。この年、今までの区画毎のワインのブレンドを廃止した。それに伴い、キュヴェ名も変更。新たにグラン・ヴァンとして生まれ変わった。
彼が大切にしているのはブドウの適熟。未熟果、過熟果は収穫時に全て畑でピンセットまで使って取り除き、完熟したブドウのみをセラーに運び醸造に入る。ドメーヌ ビゾのジャンーイヴ ビゾと同じく完全な状態のブドウのみでワインを造る。この地域の生産者には貴腐化したブドウが混ざった状態で搾汁してワイン造りを行う生産者もあるが、貴腐化したブドウを入れることでPHが高まり果汁の汚染を防ぐためにSO2の添加量を増やさざるを得なくなる。そのため出来上がったワインの味わいは重く、まるで飲むことが修行の様に感じられる。エリック・モルガは完熟状態のブドウのみを使用するためSO2の使用量は少なく、味わい深いワインでありながら実にフレッシュで軽やかなスタイルを有している。これが本来、この土地サヴニエールが表現するシュナン・ブランだ。
ワイン造り
フランスの評論家たちを唸らせているのは、他のサヴニエールの造り手とは一線を画す独自のスタイル。収量を20hl以下に抑え、自生酵母飲みを使用。木樽での長期発酵と熟成から生まれるサヴニエールは粘性と質感に覆われた独特のミネラル感を持つものとして欧米で非常に高い評価を得ている。
「グラン・ギド・デ・ヴァン・ド・フランス」や「ゴー・ミヨ・ワイン・ガイド」では、サブニエールの最高得点を獲得し、見事No.1に輝いた。また、ミッシェル・ベタンヌも今や、ディディエ・ダグノーのプイィ・フュメ、ドメーヌ ユエのヴーヴレと共にエリック・モルガのサヴニエールをロワール最高辛口白ワインに指定している。