パトリック・ボードアン
ブドウ畑の丘に立ち、この地の現在に至る数億年の歴史を語るパトリック、まるでその情熱が詰まったような彼のワインは飲む人に感動を与え続けている。ドメーヌ パトリック・ボードアンは現在13.5haの自社畑を持つ。栽培されているブドウ品種はシュナン・ブランが10ha、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンが合わせて3.5ha。畑はアンジュ、コトー・ド・レイヨン、カール・ド・ショーム、サヴ二エールに広がっている。
1900年初頭、パトリックの祖父母に当たるジュビー夫妻がこの地に畑を相続し、家族のブドウ栽培とワイン造りが始まった。1920年に現在のショドゥフォン・シュール・レイヨンに移転した。その孫にあたるパトリック・ボードアンは当時パリの書店にいたが、ドメーヌを引き継ぐために1990年にアンジェに戻り、彼のワイン造りが始まった。
ワイン造りの思想
ドメーヌを引き継いだパトリックは畑の耕作方法の見直しから始め、1997年に除草剤の散布を廃止し、2001年には一切の化学薬品使用を止め、2005年に有機栽培の認定を得た。ビオディナミに関しては、その思想に納得できないため、導入は行っていない。
ワイン造りでは1994年から補糖を止め、現在、必要最小限のSO2以外は何も使わない醸造を実施している。パトリックは2001年に天然甘口ワインに対する補糖禁止を提唱する団体「サプロ」の主要メンバーとして団体の設立を主導した。「サプロ」は当時、シャトー ディケムの故アレクサンドル・ド・リュル・サリュース伯爵を名誉会長として発足していた。
2008年以降、障害者の雇用を促進する団体ESATのアルソー・アンジューと協同して、畑やセラーへの雇用を積極的に促進している。
進化は続く
ブラック・アンジュ(片岩・火山岩土壌のアンジュ)のシュナンを追求することがパトリックのライフワーク。アンジュ地域でここでしか表現できない美しく、しかもエネルギーを感じられるシュナン・ブランの味わいを追及している。
2011年、セラーに繋がる斜面に新たなブドウ畑の開墾を始め、植樹は2019年に斜面頭頂部に至るまで続けられた。同時にセラーの増設を実施。現在、70歳を超えていてもそのエネルギーは全く衰えを見せず、自らの目標に向かって一直線に進む姿に魅了される。