マルク・ソワイヤール
マルクはジュラ地方の出身で生家はワイン造りの家系ではなかったがワインの世界に魅せられた。ボーヌの醸造学校で学び、アヴィニヨンで高等技術者資格を修得後、いくつかのワイナリーで研修し、2007年に栽培醸造学の学位を修得した。その年、ヴォーヌ・ロマネのドメーヌ ビゾに入りジャン-イヴ・ビゾとワイン造りを開始する。ドメーヌはジャン-イヴと二人だけで、マルクは主にブドウ栽培を任せられた。栽培の合間にビゾと共にワイン造りを行いビゾから多くのことを学んだ。そして6年間、ビゾ氏の片腕としてドメーヌの評価を高めていった。この間、マルクは少しづつ彼自身のブドウ畑を購入して将来、自らのワインを産み出そうと考えていた。次項で紹介するドメーヌ ド・ラ・クラでの成功によりブルゴーニュの次世代を代表する造り手としてマルク・ソワイヤールは2016年6月ニューヨークタイムズのワイン特集で紹介され世界のワイン愛好家の注目を浴びることとなった。
ドメーヌ・ド・ラ・クラ
かつてコート・ドールと並び称されるワインの産地として高く評価されていたコトー・ド・ディジョン。ディジョン市の西に広がる葡萄畑はディジョン市の工業化と共に労働者達の日々の喉を潤すワインの産地に変わり、やがて忘れ去られたこの地のワイン造りをディジョン市は復活させようと、銘醸と謳われたドメーヌ ド・ラ・クラを購入した。そして2014年、美食の街ディジョンに相応しいワイン造りを行う造り手を広く公募し数多くの応募者から選ばれたのがマルク・ソワイヤールだった。
ディジョン市が購入したドメーヌ ド・ラ・クラは全体で160haの敷地を有し、8haのブドウ畑はディジョン市を眼下に見下ろす東向き高台の斜面に開かれている。畑ではピノ・ノワールが5ha、シャルドネが3ha栽培されている。中でもマッサル・セレクションで植樹された、ピノ・ノワールとシャルドネそれぞれ0.5haの畑からはこのドメーヌの看板商品とも言えるモノポール・クラが造られる。
マルクはラドワとオート・コート・ド・ニュイ域内に合わせて1.18haの彼自身の畑を所有し、そこからエルマイヨン等が生み出される。醸造はドメーヌ ド・ラ・クラで行われる。ディジョン市にはマルクから毎年2000本のワインを納入する契約で、ドメーヌの使用・管理、出来上がったワインの販売までをマルクが任されている。
また、デジョン市はマルクの成功を足掛かりに残りの広大な敷地内でのワインを含む農産物を生産する拠点として、美食の都ディジョンの大プロジェクトを推進している。
マルク・ソワイヤールのワイン造り
ドメーヌでのブドウ栽培は認定こそ受けていないもののビオディナミ農法を実践している。
マルク・ソワイヤールはドメーヌ ビゾで行っている事、出来る限り人的な介在を行わなず醸造法も自然なスタイルを重要とするビゾ氏の哲学を自らが主導するドメーヌ ド・ラ・クラで実践している。
例えばブドウの樹の成長時期にその主幹の頂点(エイペックス)を切らない方法でブドウの樹の成長期から生殖期への自然な移行を行うことで、結果的にブドウの房数を増やさず自然な形でのグリーンハーベストと同様の効果を得ている。
ブドウは適熟時点で慎重に手摘み収穫される。セラーに運び込まれたブドウは殆どの場合、全房の状態で発酵前浸漬を行う。全房発酵、マセラシオンの後に搾汁されてそれぞれのキュヴェに応じた樽での熟成を行う。基本的にSO2無添加での醸造となるが、場合によっては僅かな量のSO2を使用する場合もある。ほとんどのキュヴェの総SO2量の分析値は10mg/L代でこれは醸造時に自然発生するSO2の量と変わらない値だ。
ドメーヌ ビゾのワイン造りと同じく、ワインに手をかけ過ぎない事。最高の葡萄をそのままワインに変える醸造法を実践している。