マルセル・ジュべール
ドメーヌ ジュベールはボジョレ地区のブルイィに4世代続くワインの造り手。
前当主マルセルは1972年からドメーヌを率いている。ドメーヌはボジョレ、ボジョレ・ヴィラージュ、ブルイィ、シルーブル、モルゴンとフルーリーに合わせて10haのブドウ畑を所有する。栽培されるブドウはガメイ種(9ha)とシャルドネ(1ha)で樹齢は40年から、100年に及ぶが同時にブルイィにある108軒の造り手の中で唯一無農薬・有機栽培を行う生産者だとマルセルは語る。
マルセルのブルイィに対する愛情は父祖の地である事に加えて、彼の祖父ペトリュスがブルイィのクリュ・ボジョレ昇格に尽力し昇格を勝ち取った運動の中心人物であったことに由来する。
引き継がれ進化する
4代続くドメーヌ ジュベール、マルセルの意思は5代目となる娘のカリーヌに2017年に引き継がれている。
ビオディナミの学校に学び、自然なワイン造りに精通しているカリーヌ。彼女の原点はドメーヌ ジュベールにあり、この地で父マルセルと共に働きやがてワイン造りを引き継ぐのは、主婦だったカリーヌがワイン造りに再起した願望であった。
カリーヌがマルセルからドメーヌを引き継いだ後も彼らのワインのスタイルに大きな変化はなく彼らの伝統の味わいを見事に守っているが、その味わいに滑らかさと旨みが一層顕著に感じられるようになった。一方、少量だがシャルドネを植えて白ワインを造るなど、ドメーヌは着実に進化の道を歩んでいる。
ジュベールのワイン造り
ゴブレ仕立ての古木が並ぶ壮観なブドウ畑、ブルイィの急な斜面には花崗岩が露頭している場所も少なくない。岩に張り付くようなブドウの樹を指さしてマルセルは「俺たちのブドウの樹は岩を食っているんだ!」と語る。
ブルイィの丘の上からクリュ・ボジョレの丘陵の連なりを見渡せる畑は有機栽培され生命感に満ちている。良質なブドウを造れば醸造で苦労することはない、芸術的なワインの造り手が言っている共通する言葉だが、ジュベールのワイン造りも同一の思想で貫かれている。ワイン造りはセミ・マセラシオン・カルボニックによるボジョレスタイルの醸造法であるがジュベールが他と異なるのは醸造からボトリングまでSO2を一切使用せず、そしてフィルター掛けも行わない事。畑でのブドウ造りに注力し、見事なブドウの味わいをそのままワインに表現している。
ジュベールではヌーヴォーも造っている。毎年、その年の気候状況を映し出したようなスタイルのワインを送り出している。補糖等一切を行わないのでアルコール度数は毎年異なるがそれぞれの年を表現した上で、美味しく楽しめるワインを送り出している。ジュベールのヌーヴォーはお祭り騒ぎではなく、もっとポジティブにその年のワインの味わいを逸早く味わえる喜びを与えてくれる。